2月24日のロシアのウクライナ侵攻からすでに1か月がたちました。私の住むポーランドにはすでにウクライナから2百万を超える人々が避難してきています。トルン(ポーランド中西部の街)にある私のアパートにも、ウクライナのヘルソンから母娘が来ています。お母さんのカテリナさん(カティア)は彫刻のアーティスト、10歳の娘のマーシャはウクライナのジュニアカップで1位になったこともある、将来有望なフィギュアスケーターです。
彼女たちの住んでいた東南部の街ヘルソンは、開戦後すぐにロシア軍の攻撃にあい、現在はロシア軍が占領する街となってしまっています。住人はロシア軍に包囲され、逃げることができず、ヘルソンには人道支援も届けることができない状態です。街に取り残された市民の非武装のデモ隊にロシア軍が発砲をする暴挙が繰り返されています。また人々は深刻な食糧不足に陥っており、街は深刻な人道危機的状態です。
幸い、カティアとマーシャは、開戦初日に危険を察知し、西側にある村に避難したため、ロシアの支配地域から逃れることができました。しかし、一刻を争う事態のなか、マーシャのフィギュアスケート靴をヘルソン市内の家に置いてきてしまいます。
その後3週間をウクライナ西部の村で過ごしますが、そこにも危険がせまり、ポーランドへ避難を決意します。ポーランドへは、トルンのスケートクラブがウクライナのフィギュアスケーターの避難先などを手配しました。そして3月22日、カティアとマーシャは3日間の長旅の末、トルンにたどり着きました。
トルンで行われた反戦デモにて。マーシャと娘
次の日からトルンのスケートリンクでの練習に参加したマーシャは、「自分の場所に戻ってこれた・・」と涙していたほど。しかし、スケート靴がありません。コーチもウクライナから新たに子供が到着するたびに予備のスケート靴を与えていったために、もう中古も残っていませんでした。今のところマーシャのトレーニングは、スケート靴なしで行われています。
自分の慣れ親しんだ故郷の街を戦争で奪われ、生活や夢もあきらめなければならないウクライナの子供たちがどれだけいることでしょう。ポーランドに逃れてきた、カティアとマーシャの夢を続ける支援をどうかお願いいたします。
2022年3月26日 SLOWART藤田泉